相対運動エネルギーの使い方

重心運動エネルギー・相対運動エネルギーとは

2 体系の運動エネルギーを,重心速度と相対速度を用いて表すことを考える.

重心速度 v_G = \dfrac{m_1v_1 + m_2v_2}{m_1 + m_2} と相対速度 v_R = v_1 \displaystyle- v_2 を用いて,

\begin{aligned}
    v_1 &= v_G + \dfrac{m_2}{m_1 + m_2} v_R \\
    v_2 &= v_G -\dfrac{m_1}{m_1 + m_2} v_R \\
\end{aligned}

と表せる.これより 2 体系の運動エネルギーは

\dfrac{1}{2}m_1v_1^2 + \dfrac{1}{2}m_2v_2^2 = \dfrac{1}{2}(m_1 + m_2)v_G^2 + \dfrac{1}{2} \dfrac{m_1m_2}{m_1 + m_2}v_R^2

となる.(実際に値を代入して確かめよ.)

\dfrac{1}{2}(m_1 + m_2)v_G^2 を重心運動エネルギー, \dfrac{1}{2} \dfrac{m_1m_2}{m_1 + m_2}v_R^2 を相対運動エネルギーという.

相対運動エネルギーの使い方

重心速度が保存するとき,重心運動エネルギーも保存し, 2 体系の運動エネルギーの変化は

\begin{aligned}
    \Delta \left( \dfrac{1}{2}m_1v_1^2 + \dfrac{1}{2}m_2v_2^2 \right)
    &= \Delta \left( \dfrac{1}{2}(m_1 + m_2)v_G^2 + \dfrac{1}{2} \dfrac{m_1m_2}{m_1 + m_2}v_R^2 \right) \\
    &= \Delta \left( \dfrac{1}{2} \dfrac{m_1m_2}{m_1 + m_2}v_R^2 \right) \\
\end{aligned}

となる.つまり,重心速度が保存するとき, 2 体系の運動エネルギー変化は相対運動エネルギー変化に等しい.このことを利用すると,たとえば以下の問題が簡単に解けるようになる.

弾丸がブロックをめり込んだ距離

問題

摩擦のない床の上にブロックを置き,そこに水平に弾丸を打ち込む.弾丸はブロックから一定の抵抗力 f を受け続けながらブロックの中をめり込み,やがてブロックの中で静止した(ブロックと一体となって動いた).弾丸の質量を m ,ブロックの質量を M ,弾丸の打ち込む速度を v_0 とするとき,弾丸がブロックの中をめり込んだ距離はいくらか.

弾丸とブロックの 2 体系に対し外力は仕事をしないので, 2 体系の運動エネルギー変化は内力(=抵抗力)のした仕事に等しくなる.よって,求める距離を d とすると,

\dfrac{1}{2} \dfrac{mM}{m + M} (0^2 - v_0^2) = -fd

となり,求める値は

d = \dfrac{1}{2} \dfrac{mM}{m + M} \dfrac{v_0^2}{f}

となる.このように,相対運動エネルギーを利用することで答えをダイレクトに求めることができる.

相対運動エネルギーを用いない場合,運動量保存則および運動エネルギーと仕事の関係から

\begin{cases}
    mv_0 = (m + M) v_1 \\
    \dfrac{1}{2}(m + M)v_1^2 - \dfrac{1}{2}mv_0^2 = -fd \\
\end{cases}

を連立して解くこととなる.(弾丸とブロックが一体になったときの速度を v_1 とおいた.)

ばねでつながれた 2 物体の最大の縮み

問題

質量 m, M の小球をばね定数 k のばねでつなぎ,ばねが自然長になるようにして摩擦のない床の上に置く.質量 m の小球に,質量 M の小球に向かって初速 v_0 を与えるとき,ばねの最大の縮みはいくらか.

小球 2 つとばねからなる系に対し外力は仕事をしないので, 2 体系の運動エネルギー変化は内力(=ばねの弾性力)のした仕事に等しくなる.よって,求める縮みを d とすると,

\dfrac{1}{2} \dfrac{mM}{m + M} (0^2 - v_0^2) = -\dfrac{1}{2}kd^2

となる(ばねが最も縮むとき 2 つの小球の速度は等しい).これより求める値は,

d = v_0 \sqrt{\dfrac{mM}{m + M} \dfrac{1}{k}}

である.このように,相対運動エネルギーを利用することで答えをダイレクトに求めることができる.

相対運動エネルギーを用いない場合,運動量保存則および力学的エネルギー保存則から

\begin{cases}
    mv_0 = (m + M) v_1 \\
    \dfrac{1}{2}mv_0^2 = \dfrac{1}{2}(m + M)v_1^2 + \dfrac{1}{2}kd^2 \\
\end{cases}

を連立して解くこととなる.(ばねの縮みが最大となったときの小球の速度を v_1 とおいた.)

まとめ

2 体系の運動エネルギーは

\dfrac{1}{2}m_1v_1^2 + \dfrac{1}{2}m_2v_2^2 = \dfrac{1}{2}(m_1 + m_2)v_G^2 + \dfrac{1}{2} \dfrac{m_1m_2}{m_1 + m_2}v_R^2

と変形でき, \dfrac{1}{2} \dfrac{m_1m_2}{m_1 + m_2}v_R^2 を相対運動エネルギーという.

相対運動エネルギーを用いると,答えがダイレクトに求まる場合がある.

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